問題解決の鍵は「細分化」にあり!デカルトから最新心理学まで、その力に迫る

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仕事や日常生活で問題に直面したとき、私たちはつい原因を大雑把に捉えがちではないでしょうか。例えば、「時間がないからできない」「あの人はやる気がないから成長しない」といった捉え方です。しかし、この大雑把な原因設定は、往々にして大雑把で極端な解決策につながり、問題解決を妨げてしまいます。

真の問題解決には、「分ける力」、すなわち「細分化」の習慣が不可欠です。この記事では、この「分ける」習慣がいかに問題解決の基本であり、プロフェッショナルの条件であるかについて、その源流から具体的な応用例、さらには自己理解への活用法まで、詳しく解説していきます。

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「分ける」思想の源流:デカルトの「困難はできるだけ分割せよ」

17世紀に活躍した哲学者であり数学者でもあるデカルトは、現代のロジカルシンキングや問題解決のフレームワークの原流となる考え方を提示しました。それが「困難はできるだけ分割せよ」です。

このアプローチは、複雑な問題を小さな要素に分け、要素ごとに検証・整理し、それを再び組み合わせて全体を理解するというものです。この思考法は、現代の科学的思考、コンサルティング、エンジニアリング、経営戦略の手法へとつながっています。問題解決が上手な人、あるいは物事の本質的な原因を特定できる人は、この「分ける」習慣を持っていると言えるでしょう。

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問題解決の実践:具体例に見る「細分化」の威力

具体的に「分ける」習慣はどのように役立つのでしょうか。

「やる気が出ない」問題の深掘り

例えば、「なんとなくだるい、やる気が出ない」という問題に対し、エナジードリンクを飲むといった解決策は、原因が大雑把すぎると言えます。やる気が出ない理由は、もっと細かく切り分けられるはずです。

  • 睡眠不足で物理的に脳が疲れているのか。
  • タスクが大きすぎて、どこから手をつければ良いか分からず、やる気が削がれているのか。
  • 自分の成果が適切に評価されず、心理的なモチベーションが下がっているのか。
  • そもそもこの仕事が自分の強みとミスマッチしているのか。

原因が眠気であれば休息や昼食の見直しが必要であり、タスクの大きさであればやるべきことを分けて小さく始める工夫が有効です。このように問題を細分化することで、大雑把で短絡的な解決策ではなく、的確で持続可能な解決策を選ぶことができるようになります。

ホットドッグ早食い世界王者に学ぶ業務改善

「細分化の神」とも言えるのが、ホットドッグ早食い世界王者の小林尊さんです。彼の戦略は、ホットドッグを早く食べるという目的のために、まずソーセージとバンズを分けることから始めます。ソーセージを半分に折って口に入れ、その間にバンズを水に浸して飲み込みやすくするという画期的な戦術を編み出しました。

この方法は、業務改善の好例として挙げられます。業務改善のプロセスは以下の通りです。

  1. 目的設定: ホットドッグを美味しく食べるのではなく、「いかに早く食べるか」に焦点を当てる。小林さんは「ホットドッグを早く食べるにはどうしたらいいか」ではなく、「ホットドッグをもっと食べやすくするにはどうしたらいいか」という問いを立てました。
  2. タスクの細分化: 「ホットドッグを食べる」というタスクを、バンズとソーセージに分け、さらにソーセージを半分に分けます。
  3. 分業化 (同時進行): 半分に折ったソーセージを咀嚼しながら、もう片方の手でバンズを水に浸す。業務フローを細分化し、シンプルにしてから組み合わせ、同時進行させるのです。
  4. 仮説検証: 小林さんは、様々な方法を試し、その特訓の様子をビデオに撮ってデータをスプレッドシートに入力し、ミリ単位の無駄にまで目を光らせて、効果のないものをやめていきました。

このように、問題やタスクを細かく切り分け、再度つなぎ合わせることで、時間やお金、ストレスをかけずに抜本的な解決策を考えられるようになります。

人間が手にした「分ける」ツール:言葉の力

人間がここまで発展できた理由の一つに、「言語(言葉)」があると言われています。言葉があるからこそ、私たちは世界を分けて理解できるようになりました。歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は、人類の進化の大きな転換点を「認知革命」と呼び、人類が言葉によって物事を分け、それを人間同士で共有する力を手に入れたことで、大規模な協力が可能になったと述べています。

言葉がなければ、「夕日の赤もリンゴの赤も血の赤も、漠然と似た色」で終わってしまうように、物事を厳密に区別して理解することはできません。また、「疲れた」という言葉しか知らなければ、「眠い」「退屈」「過労」「ストレス過多」といった具体的な違いを切り分けることは不可能です。言葉を厳格に持つことで、私たちは現実を細分化し、理解し、共有できるようになったのです。

感情の「細分化」としての感情の流度

言葉を持つことで細分化していけるものの一つが「感情」です。感情を表現する語彙の多さを「感情の流度(りゅうど)」と呼びます。感情の流度が低い人は、ネガティブな感情を「最悪」、ポジティブな感情を「最高」といった数少ない語彙でしか表現できず、感情の強弱を表現するのも苦手です。このような場合、感情を大雑把に捉えるため、解決策も場当たり的で短絡的になりがちです。

しかし、感情を細かく言葉にして切り分けられる人は、自分の状態に合った的確で持続可能な解決策を選ぶことができます。例えば、「だるい」という抽象的な感情を、「集中力が続かない」「眠気が強い」「やることが多くて圧倒されている」といった具体的な状態に分けられれば、それに応じた適応的な解決策(散歩、仮眠、タスク整理など)が取れるようになります。

複数の先行研究でも、感情の言語化レベルが高い人ほど、セルフコントロール能力が高く、アルコールやドラッグに依存しにくい、病気にかかりにくいといった傾向が報告されています。この「感情を分ける力」が高いほど、自分を適切に理解し、扱うのが上手だと言えるでしょう。お子さんがいらっしゃる方にとっては、幼い頃から感情表現を豊かにする習慣を身につけさせることで、セルフコントロール能力やストレス対処能力を高めることにつながります。

自分自身を「分ける」:認知行動モデルで自己理解を深める

あらゆる問題は細分化することで、理解が深まり、適応的な行動が取れるようになります。自分が何で困っているのか、何で悩んでいるのか、何でもやっとしているのかを説明できることは、正しい自己理解につながります。

「ただなんとなくだるい」というのではなく、「上司の言葉を自分がこう解釈して不安になっている」と言えるだけで、問題の輪郭がはっきり見えてきて、対処の糸口が見えてくるのです。

この自己理解を助ける代表的なフレームワークの一つが、「認知行動モデル」です。これは認知行動療法(CBT)の中核にある考え方で、人間の体験を以下の5つの要素に整理して捉え直します。

  1. 状況 (Situation):実際に何が起きたのかという客観的な事実。
  2. 認知 (Cognition):その状況を自分はどう解釈したのか。
  3. 感情 (Emotion):その状況の時にどんな気持ちになったのか(不安、恥ずかしさ、怒りなど)。
  4. 身体反応 (Physical Reaction):身体にどんな変化が起きたのか(心臓の動悸、発汗、手の震えなど)。
  5. 行動 (Behavior):どういう行動をとったのか(発言を避ける、SNSを見るなど)。

これらの5つの要素は常に循環しており、特に重要なのは、客観的な状況そのものよりも、どう解釈するかという「認知」の部分が、その後の感情、行動、身体反応を大きく左右するということです。

例えば、朝上司に挨拶をしたが返事がなかったという状況を考えてみましょう。

  • Aさんの認知:「無視された、自分は嫌われているのかも」 → 感情:不安、怒り → 行動:上司を避ける → 結果:関係が悪化。
  • Bさんの認知:「たまたま上司は考え事をしていて気づかなかったのかも」 → 感情:特に気にならない → 行動:普段通りに接する → 結果:関係を維持できる。

このように、同じ状況でも解釈(認知)の違いによって、その後の感情や行動、結果が大きく変わることが分かります。つまり、問題は状況そのものではなく、人それぞれが持っている「認知の偏り」にあると考えるのが、このモデルの大きな特徴です。現実そのものを変えられなくても、認知を分けて扱うことで、感情と行動、そして身体反応を変えることができるのです。

認知行動療法(CBT)とその応用

この認知行動モデルをベースとする**認知行動療法(CBT)**は、世界で最も研究されている心理療法の一つであり、エビデンスの質と量において他の心理療法を凌駕しています。アメリカ心理学会やイギリスの国立医療技術評価機構では、CBTを「エビデンスに基づく標準治療」として位置付けています。

近年では、CBTはビジネスパーソンのストレスマネジメントやリーダーシップ研修にも応用されており、Google、コカ・コーラ社、米軍などでも活用されています。これは、自分の考え方や情報処理の癖を整え、パフォーマンスを高める技術として活用されているためです。

CBTジムのオンラインプログラムでは、この認知行動モデルをベースにしたトレーニングを実施しています。日々のできごとをモデルに当てはめて記録し、自分の認知パターンを可視化することで、感情、行動、身体反応との関係を整理し、適応的な行動の糸口を探していきます。

CBTジムの参加者からは、以下のような声が寄せられています。

  • 「自分が1日でできる仕事量はこれくらい」と決めつけていた壁が壊れた。
  • 脳疲労が減り、集中できる時間が増えて仕事の生産性が上がった。
  • 「私はダメな人間だし体力もない」といった認知の歪みが改善した。
  • 休日には家でゲームばかりしていた人が、外に出て新しいコミュニティに入り、アクティブに過ごせるようになった。

このように、CBTによって思考パターンと行動を修正することで、「なんとなくしんどい」「やる気が出ない」といった漠然とした感覚や感情を、自分で主体的に管理できるようになります。

まとめ:プロフェッショナルとしての「分ける」力

「分ける力」こそがプロフェッショナルの条件であり、問題解決の基本です。複雑な問題や感情を細分化して理解することで、私たちは現実的で効果的な解決策を生み出すことができます。

認知行動モデルをトレーニングすることで、「何か者に振り回されている」という状況から、自分自身を主体的にマネジメントできる状態へと変化させることが可能です。

この「分ける」習慣は、単なるスキルではなく、より良い人生を送り、主体的に問題解決に取り組むための強力な武器となるでしょう。

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