かつて、政治も経済も安定し、世界中の旅行者や留学生が憧れる輝かしい国・カナダ。しかし、2024年に突如としてその理想像が崩れ、国民の日常生活に深刻な影を落とす事態が発生しました。
今回は、かつての希望に満ちた新時代がどのようにして生活困難へと転落したのか、その背景や原因、そして今後の展望について、詳細かつ分かりやすく解説いたします。
1. カナダのかつての輝きと理想像

カナダは、北米大陸に位置し、ロッキー山脈やナイアガラの滝といった自然美に恵まれる国土を持っています。国土面積はロシアに次ぐ世界第2位。その広大な大地に、国民の約80%がアメリカとの国境付近に集中して暮らすという特異な人口分布も特徴です。
また、カナダは国民皆保険制度により、医療費が原則無料という社会福祉制度が整備され、2015年に就任したジャスティン・トルドー首相のもと、若さと革新的な政策で国民の期待を一身に集めたのも事実です。
新時代の象徴として掲げられたのは、中流階級の所得軽減、クリーンエネルギー推進、先住民族支援、そして多様性を重視した移民政策など、従来の政治の枠にとらわれない数々の公約でした。
2. 現代のカナダが直面する深刻な危機
しかし、時は流れ、かつてのキラキラとした国も急激な現実の問題に直面することとなりました。現代のカナダが抱える問題は大きく分けて、以下の2点に集約されます。
2-1. 食料不安とフードバンク利用の激増

2024年、カナダでは生活の困難さから1ヶ月間のフードバンク利用者数が200万人を突破しました。統計によれば、2022年時点で約900万人(全人口約4000万人の約22%)が何らかの形で食料不安を抱えており、5人に1人が食事の確保に不安を感じ、6%の国民が実際に食事の量を削って生活しているという現実があります。
かつては医療や福祉面で羨望の的だったカナダが、食卓を前に深刻な危機に陥っている状況は、決して笑い話ではありません。
2-2. 急騰する住宅費と住環境の悪化

トロントをはじめとする主要都市では、住宅費の高騰が生活の重荷となっています。2021年から2023年にかけて、トロントの平均賃貸価格は41%上昇し、ワンベッドルームの家賃は約2538カナダドル(当時の為替で約25万円)に達しました。住宅購入に関しても、上位10%の所得を得る者でさえ、平均的なローンを組むのが困難な状況に追い込まれています。
住宅不足の根底には、都心に集中する人口の偏り、建設業界の人手不足、複雑な許認可プロセス、さらには外国人投資や遊学生の急増など、さまざまな要因が絡み合っています。
3. 移民政策の歴史と現代への影響

カナダの発展は、実力主義を基盤とする移民政策と切っても切り離せません。16世紀初頭のヌーベルフランス時代、18世紀のイギリス支配、そしてアイルランドやアメリカからの労働移民と、カナダは多様な人々によって形成されてきました。
3-1. 初期移民と多文化共生の歩み
- 植民地時代から近代まで
1600年代初頭、フランス人による植民地経営から始まり、フレンチ・インディアン戦争を経てイギリスの支配下に入ります。その後、ロイヤリティやアイルランドからの移民が活躍し、国の基盤を築き上げました。 - 中国系移民とその苦難
1880年代、大陸横断鉄道建設のために集められた中国系移民は、劣悪な労働環境と低賃金に苦しみ、数多くの命を落としました。鉄道完成後、差別的な人頭税や排斥法により、彼らの移住は事実上閉ざされる結果となりました。
3-2. ポイント制移民制度への転換
第二次世界大戦後、ホロコーストの悲劇を受けてカナダは人種差別的な政策を見直し、1967年に導入されたポイント制移民制度は、学歴、職業経験、言語能力など客観的な基準で移民希望者を選抜する革新的な仕組みとして高く評価されました。これにより、世界中から高度なスキルを持つ移民が集い、カナダは多民族・多文化国家としての地位を確立していきました。
3-3. 過剰な移民受け入れとその弊害
しかし、2016年以降、ジャスティン・トルドー首相は経済拡大と高齢化対策のため、積極的に移民受け入れを拡大しました。結果、2023年には年間約120万人もの移民が流入する中で、移民申請が180万件以上滞留する事態に発展。
かつてカナダの発展を牽引した移民政策が、今や住宅供給の逼迫や労働市場のミスマッチ、そして国民生活の苦境を招く要因となってしまったのです。
4. 政治的混乱と政府の対応

過剰な移民受け入れに起因する住宅危機や生活費の高騰は、国民の不満を一気に爆発させ、政府の支持率を急落させる結果となりました。2024年12月には、自由党の支持率が僅か2%にまで低下し、これまでの期待に裏切る形となりました。
また、国内では「フリーダムコンボイ」などの抗議活動が全国的に巻き起こり、政府は緊急事態法を発動して抗議者の銀行口座凍結や警察の強権行使を許可。これにより、一部の国民からは「自由の国カナダらしくない」と厳しい批判が飛び交いました。さらには、炭素税によるエネルギー価格の上昇や、主要閣僚の辞任(移民・住宅大臣や副首相・財務大臣の突然の退陣)など、内部分裂が表面化。結果、トルド首相自身も責任を認め、辞任を表明するに至りました。
5. 医療・経済の二重苦とその影響

住宅費や食料費の高騰は、国民生活に直撃するだけでなく、医療分野にも波及しています。2023年には非緊急治療の待機時間が27.7週間に達し、待機中に亡くなる患者も少なくありません。さらに、家計債務は急激に拡大し、国民の借金は増加の一途をたどっています。これらの問題が重なった結果、カナダ国民の約60%が生活費が収入に追いつかず、貯蓄を切り崩さざるを得ない状況となっています。
6. まとめと今後の展望

かつて、移民政策と多文化共生により「理想郷」と称されたカナダ。しかし、過剰な移民受け入れとそれに伴う住宅不足、食料不安、医療の遅延といった複合的な問題が、国民生活に暗い影を落とす結果となりました。政治的な混乱と政府の対応失策も相まって、国民の信頼は大きく揺らいでいます。
2025年に予定される選挙は、今後のカナダの行く末を大きく左右する転換点となるでしょう。内外の課題に真正面から向き合い、持続可能な政策を再構築することで、再び国民が誇れるカナダへと舵を切ることが期待されます。かつての「キラッキラ」したイメージを取り戻すためには、政策の質と量の両面からの抜本的な改革が不可欠です。
カナダの未来に対しては厳しい現実が横たわっていますが、同時に変革の兆しも見え始めています。希望と挑戦の先に、再び明るい未来が訪れることを信じ、私たちもその動向から目が離せません。


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